「実話マジック」の達人

  • 2014.05.27 Tuesday
  • 00:46


小学生の頃、学校行事でキャンプに行った。そこで班別に出し物を披露することになった。僕の班はオーソドックスに歌を歌ったんだと思う。よく覚えていない。

そんな中、同じクラスの別の男子の班がやった寸劇が頭の中から離れない。その劇は通り魔が通行人を撃ち殺し、やってきた警官も撃ち殺し結局犯人意外みんな死んでしまうという北野武監督の映画からストーリーを取っ払ったようなしょーもない話だった。

そんな劇がどうして頭から離れないのか。それは劇の冒頭で
「この物語は、実話です」
と、ナレーションされたから。

この一言で僕はこの劇に俄然興味をもって見ることができた。しかし、この劇を作ったクラスメイトに話を聞いたら
「話を面白くするための嘘」
と、言われてしまった。

僕はこれを「実話マジック」と呼んでいる。

この「実話マジック」を効果的に使っている作家がいた。司馬遼太郎。今もなお、影響力が高い国民的作家である。この司馬の「実話マジック」がどれだけのものか解説したのが「司馬遼太郎が描かなかった幕末」。

僕はこの本を読んで司馬遼太郎の凄さを改めて思い知らされた気がする。司馬は僕のクラスメイトがやったような「実話です」という単純な手段は使っていない。小説の中に自分を登場させてさも歴史的資料があるかのように解説する。
もちろんそんな資料があるわけじゃない。それに自分の小説の中で都合が悪い事実を故意に隠したりもする。

こういう「実話マジック」テクニックを駆使したおかげで、司馬の小説は史実と思って語る男が多いらしい。僕も「竜馬がゆく」の中で紹介されたエピソードをそのまま信じているのがいくつもあった。

たとえば、坂本竜馬の姉、栄(えい)が竜馬が脱藩する際、「陸奥守吉行」という刀を渡して、自分は家族に誄が及ばないように自害するというエピソード。これは元々坂本家の曖昧な伝承だったのだが、その話が「竜馬がゆく」で紹介されてから子孫たちの手で栄の墓が建立される。しかし、その後本物の栄の墓が発見され、その伝承自体が疑問視されるようになる。
司馬が書くことによってこの「伝承」が「史実」として独り歩きしたのは間違いない。僕もこの本を読むまで信じきっていたから。

薩長同盟を竜馬の一言が結ばせるきっかけになったなどという「竜馬がゆく」のキモの部分が史実ではないというのは実に面白い。そしてそれをさも史実のように見せる手腕は見事。僕はフィクションを読者に信じさせるくらいの力量があるのが作家の本領だと思う。

「この物語は、実話です」の一言も僕の興味をかきたてた。司馬の作品も僕を信じ込ませた。それでいいと思う。それがフィクションの楽しみ方だ。

モナコイン MHGV4YcYih97ArRsrViTxyqzzst65sjfCp
#monacoin

 

面白い人間になりたい

  • 2014.05.21 Wednesday
  • 23:43


僕の話は面白くない。実際に会って話をしてもつまらないだろうなと思う。

「なぜ、あなたの話はつまらないのか?」本当になぜなんだろう?

著者は現役の放送作家。彼はつまらないのは話の「構成が悪い」からだと言う。

だったら「うまい構成」にするためにはどうすればいいのか?

1.面白く伝えるために必要な要素をチョイスする。
2.チョイスした要素を面白く伝えるために順序立てる。

そこで出てくるキーワードが「共感」と「フリオチ」。2章と3章でそれぞれのやり方、「共感」できるネタの見つけ方と「フリオチ」のテクニックを解説する。

フリオチのやり方はとても簡単!!

最初に「オチ」を決めてそこに矛盾した「フリ」を当てる。そして、「フリ」→「オチ」の順に並べ替える。そこに「なのに」というブリッジをかける。これですぐに構成が組み立てられるという仕掛け。

さらに、4章で話を面白くするために芸能人が使っているテクニックを紹介。

特にうまく使えたら爆発的に面白くなること請け合いの「たとえツッコミ法」は絶対マスターしたい。

これらを使って話の面白い人間になってみようと思う。

モナコイン MHGV4YcYih97ArRsrViTxyqzzst65sjfCp
#monacoin

「暗殺教室」8巻のス・テ・マ……

  • 2014.03.04 Tuesday
  • 23:40

今日発売になった『暗殺教室』を読んだ。中学生が巨大な建物に侵入して大人相手に戦うなんてかなり荒唐無稽だと思っていた。
しかし、『聖闘士星矢』や『リングにかけろ』でそんな設定とっくにやっていたのを思い出した。車田正美先生は偉大だ。

そんな『暗殺教室』の最新刊は僕が『週刊少年ジャンプ』を購読していた時と違って展開が早い。今回の「巨大ホテル潜入編(で、いいのかな?)」がおそらく『暗殺教室』の中では一番長いエピソードだと思う。 それでも8巻でホテルに侵入して8巻が終わる頃にはラスボスのところまで行っている。

僕が読んでいた『聖闘士星矢』や『北斗の拳』だったら敵1人を倒すまでにコミックス2〜3巻くらいは軽く使っていたんじゃないかな?

実際、この『暗殺教室』は作品内の時間で1年間というデッドラインが決まっているのだから、連載が続くようにしたいと思ったら1エピソードを少しでも伸ばすことを考えると思う。これは長期連載では必要不可欠な要素だ。
それを排してスピーディーな展開をするのは、連載を続けることよりも物語をどう面白くするかを重視してるのだろう。

おかげで次巻がとても待ち遠しい。雑誌で読んでいれば1週間後には続きが読めるのだけど、コミックスで追っていると数ヶ月待たなければいけないのがもどかしい。もちろん1話1話を1週間毎に読むよりも一気に数話読み切る方を選択したのだから文句は言えないのだけど。

それはともかく、主人公(?)の渚が出てから絶対このシチュエーションになると思っていたが、8巻にしてやっと出てきたな。何のことかわからない人は『暗殺教室』8巻を読んでみよう。……ステマでした。

理系の人々4巻をやっと読んだ

  • 2014.03.04 Tuesday
  • 01:13
評価:
よしたに
KADOKAWA/中経出版
¥ 1,000
(2014-03-01)


本当は3月1日に買うはずだったんだけど、土日は結構忙しくて本屋さんまで行くことが出来なかった。だから、今朝仕事に行く前に購入した『理系の人々4』。

今回も理系あるあるネタがいっぱいある。さすがに4巻ともなればいい加減ネタが切れて無理矢理感が出てくるのかなと思っていたがさにあらず。さすがにシステムエンジニアを12年勤めているし、なにより30年以上も理系人間で居続けているのだからまだまだネタは尽きることはないのではないかな?

だいたいコミュニケーション嫌いだから、それで他人に迷惑をかけることが多い。なにかトラブっても報告より先に自分で何とかしようとしてしまうところはまさに僕自身にも身に覚えがある。

コミュニケーション嫌いなくせに自分の知っている知識を披露しないと気がすまない。もちろん僕は素面でやってしまうけど……。

もちろん理系あるあるネタだけで構成されているわけじゃなく、今回も日本の科学の最先端に取材に行っている。今回は『ロボット』。ロボットと言っても乗るタイプじゃなくてロボットスーツHALというまるで着るように装着するロボット。ああ、『宇宙の戦士』のパワードスーツみたいな感じかしら?

医療用として開発が進んでいるロボットスーツ。もうかなり人間の動き、人間の意思に連動できるようになってきているみたい。読んでいる限りではもうすぐにでも実用化できるんじゃないかと思うのだが、まだまだ課題は多いのだろう。

よしたにさんのレポートは取材対象の科学者などにも容赦なくツッコミを入れていくるのが面白い(もちろん心の中だけど)。だって科学者も理系だもの。やっぱ変だよね。

「ビブリア古書堂の事件手帖 (5) 〜栞子さんと繋がりの時〜」を読み終えた

  • 2014.02.23 Sunday
  • 00:48

読み終わった。『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) 〜栞子さんと繋がりの時〜』。

相変わらず面白いので昼休みや電車の中で読むのに適していない。途中で止めるのが本当にもったいない、気になる。

今回は始めて栞子さんの(このブログを書くときのルールとして今現在生きている実在の方は「さん」や敬称を付けるが架空の人物や歴史上の人物に対しては呼び捨てにしている。でも、この栞子さんだけは「さん」付けしたくなるんだよなぁ)メガネ姿が見れる。
この作品のイラストは越島はぐさんが担当しているが、過去の4巻までではメガネ姿の栞子さん描かれていなかったと思う。手に持っていることはあったが。作品内では栞子さんはメガネをかけているのが普通なのに。似合わないと思っていたのかな?今回の5巻の表紙で見る限りとても似合っていると思うんだけど。

今回気になったのはプロローグとエピローグの違い。プロローグは5月31日の話なのにエピローグは5月が終わるのに5日も残っている。それに主人公の五浦大輔と栞子さんの会話もちょっと変。男の告白に対して、女が返事をするというシチュエーションに間違いはないのに何かが違う。何かのミスなのかな?

いくら考えてもわからなかったので答えを知るためにAmazonのレビューを読む。

ああ!やっとわかった。「人」違いだったんだ。

まだまだ読み方が浅いなぁ_| ̄|○
JUGEMテーマ:読書感想文

読んでいない本について堂々と語る方法

  • 2014.02.19 Wednesday
  • 00:54

まだ読み終わっていないのだけど、そろそろ堂々と語れそうなので感想を書いてみようと思う。

僕のTwitterのタイムライン上でこの本のことが流れたので面白そうだと地元の図書館のサイトで在庫があるか確認した。あったので早速サイト上から予約手続きをとった。今は本当に便利になったなぁ。
さすがに取置まではしてもらえるが図書館まで取りに行かないといけない。まあ、それくらいはしないとね。

翻訳本だし、分厚い装丁だと思い込んでいた。ところがあにはからんやハードカバーにしては薄い。ザッと目次に目を通してみても第1部は「読んでいない」のレベル。第2部は「誰」に対して語るのかというシチュエーションのこと。第3部は心構えの章。

この本に期待をしていたのは具体的なノウハウを教えてもらうことだったのに。
なにせ、最近はなかなか本を読むこと自体が難しいのでここに書かれていることを実践すればブログにも有用なのではないかと考えていた。

しかし、実際に読んでみるとほとんどがいろんな本や映画からの引用ばかり。
「これは外れたな」
と、言うのが最初の感想。

ところが読み進めるうちに実は所々に具体的なメソッドらしきものが隠されているのではないかと思えるようになってきた。

僕は今は本を読む時はiPod touchにメモを取りながら読むようにしている。図書館の本なので本自体に書き込みはできないし、そもそもしたくない。ノートに書きながらと思ってもA5サイズのノートは電車の中では本と一緒に開くのは一苦労だ。その点、iPod touchならモバイルバッテリーにつなげておいたら画面は起ちあげた状態でメモをとることが可能だ。

そうやって書いたメモを読み返すと実はテクニックらしきものをメモしていたことがわかる。

曰く、堂々と語ること。これは心構えではなくテクニックである。本を読むことと語ることは同じではない。例え語っている相手がすでにその本を読んだことがあって、間違いを指摘したとしても堂々と
「別の本のことを語ってしまった」
と、いけしゃあしゃあと言い切る。

他人が書いたレビューも有効活用しよう。この本には書かれていないがAmazonのレビューなどをザッと流し読むだけでも内容の概略は理解できる。実際に読んだとしても覚えているとは限らない。僕がメモを読み返してこの本に書かれていたことを始めて理解したのと同様。自分のメモも他人のレビューも忘れていれば同じようなものだから後ろめたさを感じずに有効活用させてもらおう。

僕はどうするか。読んでいなければ堂々とそう言う。その上で自分はこういう本だと思ったと言い切る。実際、この本だってまだ読み終わっていないのだから。
JUGEMテーマ:読書感想文

「人生って、大人になってからがやたら長い」やっと感想書けた

  • 2014.01.23 Thursday
  • 00:34


随分前に読んだのだけど、今日になるまで感想が書けなかった。

漫画として普通に面白いし、感動もしたし、共感できることも多い。特に37ページの積木くずしのイメージは「ああ、わかる。やっぱ俺達って昭和生まれだよね」って勝手に親近感が湧いてしまう。

だけど、感動の正体がいまいちわからなかった。

この漫画の後半になると奥さんのお父さんが病気になって亡くなった頃の話しが出てくる。
その看病が終わって心労が祟ったのかお義母さんが病気になりがちになった。それできたみさんは奥さんを通じてお義母さんを近くに呼び寄せることを提案したそう。
きたみさんはこの漫画の中で何度も自分が大人になれていないことについて悩んでいる。そのきたみさんが自分がいることで安心していてもらえるための行動を取ったことに感動したんじゃないかと最近になって思えてきた。

岡田斗司夫さんが感動の本質は自分には出来ないと思うことに共感できた時に人は感動すると言っていた。人殺しは確かに自分には出来ないが共感できないので感動しない。でも、自分を犠牲にして人助けをした人にたいしては感動できる。

だから、僕はこの本に感動したのかもしれない。

翻って今の僕は嫁さんの実家に住まわせてもらっておきながら、何一つ行動できていない。義父母も齢を重ねて体力気力が衰えていくことが増えてき始めている。そんな人に世話になっておきながら何もやっていない自分がいる。もし、僕が少しでも何か行動していたら、もしかしたら共感できても感動まではしなかったかもしれない。

それが情けない。

そして、きたみさんを尊敬できる。年下だけど。

広報室って本当はどんな感じなんだろう?-『空飛ぶ広報室』を読んで

  • 2014.01.16 Thursday
  • 00:32


やっと読み終わった、堪能した有川浩さんの『空飛ぶ広報室』。いくら厚い本だとはいえ、一週間かかるとは思わんかった。

航空自衛隊の広報が舞台。読み始める前は華やかなブルーインパルスを事故で辞めざるを得なくなった、主人公が徐々に広報室で頑張って意義を見出す話かと思った。
概ねそれは間違っていなかったが以前読んだ『64』と違ってなんか明るい。『64』は表舞台ではないからと広報の立場があまり良く描かれなかった感じがした。主人公も刑事に戻りたがっていたし。言ってしまえば全体的に暗い。
だが、『空飛ぶ広報室』の方はなんだか明るい。広報の立場も他の部隊も理解しているみたいで物事がサクサクと決まっていっている感じがする。主人公の空井大祐も1章の段階で広報の仕事の面白さに目覚めている。

これは警察と自衛隊の違いなのかしら?自衛隊は最初からマイナスイメージでスタートしているから広報に力を注いでいるのは小説を読むと納得する。たいして警察の方はそんなにイメージを上げる必要がないから必然的に広報が閑職扱いになるのかな?そんな疑問が湧き上がった。

でも、読み進めていくうちに単純に作風の違いにすぎないんじゃないかと思った。

ミステリーの『64』の方は広報で頑張る、いややっぱり刑事に戻りたいという葛藤が事件の真相に近づくように書かれている。『空飛ぶ広報室』は有川さんが書く以上ラブコメ前提だから空井も相手役の稲葉リカもやさぐれている場合じゃないものな。

何よりも有川さん自信が航空自衛隊の広報室に興味をもっているのだから良いイメージになるのは当然かもしれない。

だけど、実際の警察と自衛隊の広報ってどんな感じなんだろう?
評価:
有川 浩
幻冬舎
¥ 1,728
(2012-07-27)

「妻を帽子とまちがえた男」の中の『双子の兄弟』のエピソード

  • 2014.01.09 Thursday
  • 01:13


やっと読み終わった『妻を帽子とまちがえた男』。映画『レナードの朝』の原作『めざめ』の著者オリバー・サックスは神経学者。その仕事の中で診察した様々な症状をもった24人の患者のエピソードを集めた医療エッセイ。

海外の翻訳物は分厚い上に文体が取っつきにくいので読むのに苦労する。それでも何とか読めたのは載っている症例が面白いからだ。

表題の『妻を帽子とまちがえた男』は視失認の男性の話。脳の視覚系の部分に異常があると眼科医から指摘される。いざ、サックス医師の診療が終わって帰ろうと帽子を取るとそれは傍で立っていた妻の頭だった。これだけ見たらコントのようだと思うが診療していたサックス医師ににしてみたら(あと奥さんも)その症状の重さに愕然としたことだろう。

僕がもっとも興味をもったのが『双子の兄弟』のエピソード。知恵遅れで自閉症の双子。だが、二人は数字と記憶に関してものすごい才能を持っていた。どの年のどの月のどの日をあげてもそれが何曜日か答えられる。これを求める計算式があるそうだ。アニメ映画『サマー・ウォーズ』の主人公、小磯健二は冒頭部分でこの計算をやっている。だが、この双子は計算が理解できない。どうやらパッとわかるらしい。目の前に現れる感じか?

二人で数字の素数を上げていく遊び(サックス医師が持っていた素数表には12桁の素数は載っていなかったが双子はそれ以上の桁の素数を上げていったそうだ)を繰り広げるだけの生活を送っていた二人は自立させられるために引き離されてしまう。そこで単調な仕事をするようになると数字の才能を発揮することは無かったという。

果たして、二人を引き離したことは良かったのだろうか?

僕は良かったと思う。この二人が数字を楽しみ続けるためには誰かの庇護がなければいけない。この数字の才能は生きていくのに不向きだ。彼らは生きていく能力を与えられた。決して楽しくはなかったと思うけど……。

生き心地の良い街はおすすめ

  • 2013.12.08 Sunday
  • 00:49


以前パオロ・マッツァリーノさんのブログで紹介されていた本。どうしても読みたいと思ってやっと読むことが出来た。

どうして読みたいと思ったかと言うとその頃読んでいたのが岡田斗司夫とFREEexの「僕らのあたらしい道徳 」。これを読んでる時にどうしても今の社会を何とかするのは道徳だとは思えないという感想しか出てこなかった。道徳で何とかするという前提で話しが進んでいるので何か違和感があった。

そんな中でパオロさんのブログで紹介されていたのを読んですごく気になった。誰かが決めた価値観を強制する道徳よりも多種多様を重んじて共生する民主主義のほうが向いているのではないかと思えた。1冊の本よりも数百字のブログ記事のほうが僕にははるかに説得力があった。

それで読んでみると予想以上に面白かった。徳島県海部町(現・海陽町)はありふれた海沿いの田舎町。そこは本土一の「自殺希少地域」。どうしてこの小さな町が極端に自殺が少ないのか同じ徳島県で自殺者数が上位にランクされている町(本の中ではA町と表現)と比較しながら現地調査が進んでいく。
 

『日本の中に、「自殺希少地域」がある。
毎年三万人が自殺により亡くなっていく日本に、先進七カ国中自殺率がワースト一位の日本に、「自殺希少地域」が確かにある。
この発見自体が、素直に嬉しかった。』(24ページ)


この海部町はそんなに特殊な町ではない。高齢者や病人も少なくないし経済的にも決して裕福ではない。いわゆる自殺危険因子は他の市町村と何ら変わりがない。そこで著者の岡壇(おかまゆみ)さんは自殺予防因子が高いのではないかと考え、現地に入ってフィールドワークをする。この過程もとても面白い。

5つの自殺予防因子も予想と違っているが読んでいくと納得行く。特に『「病」は「市」に出せ』は。病=あらゆる問題、市=公開の場という定義で考えたら確かに病気に限らずいろいろな問題は早めに他人に話すだけでも違うだろうし、何かしらの解決策を示してもらえるかもしれない。僕らは何とか自力で解決しようと考えて結局手遅れになる寸前になって初めて公開することが多い。それは他人に迷惑をかけてはいけないという美徳ではあるのだけど、海部町では違う。早めに話して置かないと後で他人に迷惑をかけてしまうと考えるようだ。理にかなっている。

他所者に対しても興味津々で近づくが適当な頃にサッと距離ができる。だから鬱陶しさも最初のうちだけ。後は適度な距離でゆるやかにつながっている。決して他所者を排除しない、理想的だと思う。

養護学級に対する考え方も独特だ。人と違うことで別の枠に押しやったりしない。赤い羽根共同募金にお金が集まらない。募金した人がいると聞いてもうちは家と意に介さない。多様性を重んじている。

他所者が集まって出来たという歴史的に見てもかなり特殊な成り立ちの海部町。しかし、東京だって他所者の集合体であることには変わりないが、かなり排他的だと思う。

海部町を真似すれば明日から自殺者は激減するかと言えばそれはないと思う。それは本書の中でも言われている。
では、どうすればいいのだろう。

著者は「どうせ」をやめよう。と、提案する。自分は決して小さな存在ではないと少しでも思えるようせめて「どうせ自分なんて」と卑下する言葉を使わないことから始めよう。

僕もそこから始めよう。そして「病」を市に出そう。他人と排他的な今よりも少し繋がろう。そう、思った。

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