大正、昭和初期に活動した作家であり実業家でもある菊池寛。
と言っても今ではほとんど知られていないと思う。
「恩讐の彼方に」かドラマにもなった「真珠夫人」くらいか。それでも20年前だけど。
有名なのはセンテンススプリング……もとい芥川賞、直木賞でお馴染みの文藝春秋社の創業者ということくらいか。
その菊池寛の作品で「義民甚兵衛」という短編がある。
どういう話かといえば日本版「シンデレラ」といったところか。「シンデレラ」と同じ「継子いじめもの」という意味だけど。
ただ「シンデレラ」のように権力者に認められて幸せになりました。とはならないけど。どっちかと言えば復讐譚。
そういえば「灰かぶり娘」の邦題で菊池がグリム版の「シンデレラ」を訳してる。別にそれに影響されて「義民甚兵衛」を書いたわけじゃないだろうけど。
菊池の作品は青空文庫で公開されている。「義民甚兵衛」も上がっているが、これは戯曲。
戯曲の前に小説が書かれているはずなんだけど。この小説版を菊池本人が戯曲に書き換えたと芥川龍之介がどこかに書いてた。
だから内容は小説も戯曲もほぼ同じはず。それでも一般的な評価は小説版の方が高い。
ゆえに小説の方を読みたいんだけど、そちらはネット上には見当たらない。
Kindleで上がってるのは全集と称しているのも含めても青空文庫を元にしているから戯曲しかない。
じゃあ紙の本でもいいや。と思ってもいったいどの本に収録されているのかいくら調べてもわからない。
ちゃんと「これは小説。これは戯曲」と明示してほしい。
しょうがないので戯曲版は読んだ。これはこれで面白かった。
だからなおさら小説も読んでみたい。