「天才と言うのは非常識なんだから何をやってもいいじゃないか」
と、いう意見を目にすると思い出すのがGyaoジョッキーの「ひとり夜話」で語った「いしかわじゅんvs.梅図かずお」。
Gyaoジョッキーを録音しているので該当部分を文字起こししてみた。
(以下文字起こし)
ミクシィってあるじゃないですか。
あれでいしかわじゅんさんがもう一カ月以上になるのかな。例の梅図かずおの新居問題。梅図かずおが自分の家を建ててそれが赤と白の縞模様なので地域住民が怒って反対して反対の署名活動したっていう話、あるじゃないですか。あれに関して書いてあったんですね。
で、大体いしかわじゅんのマイミクの人たち、つまり友達の人たちですね。日記にレスポンス読んだりレスポンス書いたりする人たちは漫画ファンが多いんですよ。で、あとブログの人たちブロガーの人たちも、なんだろうなどちらかというと漫画家に対して好意的な人が多い。
なので、僕が見てるかぎりではですね、梅図かずおの新居問題に関してはですね、梅図さんに対して好意的な意見が多かったんですね。
ま、中川しょこたんが言うように「梅図様は神ですから何をしてもいいんです」とまでは言わないけども、「ま、梅図かずおの家なんだから赤白だんだらでも当たり前だろ」っていう意見とかですね。もしくは「あの人、天才なんだから好きなようにさせてやれよ」とかですね。あとは「赤白だんだらの家なんて面白いじゃないか」っていうやつ、こういうのが多かったんですよ。
ところが、いしかわじゅんが自分のネットの日記で真っ向から反対したんですね。
「梅図かずおがあんな赤白だんだらの家を造ったんだけどもあんなの嫌に決まってるよ。あんなのが近所にあったら俺もイヤだ」
とか
「梅図かずおは漫画の天才なのかもわかんないんだけども、ああいうことはやめてほしい」
って書いたんです。
それに対していしかわじゅんのマイミクの人たちもビックリしてですね。てっきりいしかわじゅんさんは漫画家だから梅図かずおの味方だと思ったんでしょうね。
「いしかわさんは梅図さんが嫌いなんですか?」
とかですね。もしくは
「梅図さんは天才だからいいじゃないですか」
さっき言ったような意見が続出したんですね。
それに対するいしかわじゅんの意見が割と大人で男らしくて、僕ビックリしたんですよ。曰くですね
「梅図かずおは漫画の天才かもしれないが、漫画の天才である。それは間違いない。だから梅図かずおが漫画で何を表現しようと規制されるべきではない。しかし、漫画の天才で漫画が規制されるべきではないということと、一般市民であるということはまったく別問題である。漫画の天才だからといって一般市民として何をしてもいいということにはならない」
って書いたんですよ。
このあたりでガーッとレスポンスが過熱して「そうは思わない」っていうのがガーッと来て、ほとんどいしかわじゅんに賛同する人がいなかったんですね。
面白いなって思って。だってそれ読んでるのほとんどいしかわじゅんのファンの人なんですよ。いしかわじゅんが直接読むのわかってても正面切って反論って。
僕はあんまりいしかわじゅんのミクシィ周りブログ周り見たことなかったんですね。
で、いしかわさんがそれに対していちいちそのレスに対してコメントで丁寧に反論してるんですね。つまり同じことの繰り返しなんですよ。結局、「漫画の表現と個人の生き方とは別だ」って話なんですね。
それに対して「あの家はある種アートで梅図かずおらしい」って言うのに関しては
「いや、あんなのはアートでもなんでもない。ただ単に趣味が悪いだけだ」
じゃあ、あれが梅図かずおのアートのセンスなのかというとそうじゃない。だって梅図かずおの漫画は、いしかわじゅんはこんなこと言ってないですけど、「別に赤白だんだらでもなんでもない」わけですよ。
ただ単に僕たちは梅図かずおというと赤白だんだらの服を着る面白い人として認識して認知しているけどもそれと漫画とは別なんですよね。
いしかわじゅんはそれを言ってるだけなんですけども、ついつい僕たちは漫画の表現を守るとかですね、表現の自由を守るということは表現をしている人に対して無制限の権限を与えることだとついつい思っちゃうんですね。
僕も梅図かずお問題に関しては、どちらかというとそれを読むまでは地域住民に関して割と批判的な目で見てたんですね。正直なところ。
「梅図かずおなんだから赤白だんだらでもいいんじゃないの」
って思ってたんですけども。なんかねそうじゃないですね。
だってよく考えてみたら梅図かずおの家の周りに住んでいる人だって普通に生きてるんですよ。で、自分の家を30年とか40年とかのローンで買ったりしてるわけですね。で、梅図かずおが赤白だんだらの家を造ったらたしかに漫画ファンは面白いし、ブロガーの人たちは面白がるかもわかんないですけども、あきらかにその土地の路線価は下がりますよね。
なんでかって言うとそれまで上品な住宅地になっていたのがそこに観光名所というほどのバリューはないけどもただ単にヘンテコな建築が建ったらそこの地価下がるわけでしょう。
そうすると1億円とか2億円の物件をですね。20〜30年ローンかけてやっと建てた人たちがそれで1割とか2割、価値が減っちゃったらそれの責任は誰がとるのかって話。
まあ、こんな面倒くさい硬い話すんのはなんですけどなっちゃうわけですよね。
じゃあ、面白がる「漫画の表現を守れ」とか「いやぁ、梅図かずおは神なんだから何をしてもいいんですよ」という人が責任持って周りの土地を全部買って、梅図かずおのすべての表現を守るのかというと、彼らにはその力もないわけですよね。
そんだけの財力もなければ根性もないような人たちがただ単に「漫画家の表現を守れ!」って言って、周りにいる迷惑顔している普通の人たちっていうのをなんかまるで「頭が固くて表現の自由がわからない奴らだ」みたいなこと言ってるのは、なんかそれは違うのかもな。
自分自身もね、そんなことを考えていただけにすごい反省して「いしかわじゅんわりと言うな」と見直してしまいました。
と、言うのがですね、あれですね「いしかわじゅんVs.梅図かずお」ですね。
で、冷静になって考えたら、白黒まだらの家がですねアートであるはずがないし、面白いはずがないんですよ。
もし、それが本当にアートなんだったら梅図かずおがやらなくてもいいはずなんですね。
でも、そうじゃなくて僕たちは梅図かずおの家で赤白だんだらだから面白いっていう風に考えてるのは、やっぱり明らかにキャラクターとして面白がって、無責任な立場で面白がってる。
せいぜい言ったら「僕の家の近所だったらかまわないよ」ということくらいしか言えないはずなんですよ。でも、それを他人の家の近所でそれを他人に対して「梅図かずおなんだからいいじゃないか!」って強要する権利はなんかないはずなのに、ここらへんもなんとなくブロガーと一般の社会の温度差がちょっとあるなと思っちゃった時ですね。
(以上文字起こし)
天才だからって表現者だからって一般常識を破っていいなんて、他人に迷惑をかけてもいいなんて思えない僕はつくづく「岡田斗司夫」から影響を受けているなと思う。
被害者でもないのに、被害にあった人のことを想像して憤るなんて自分らしくないと思うんだけど、どうしても今回の件は不快だなと感じずにはいられない。