SFはラブストーリー最後の砦〜キャラメルボックス『時をかける少女』観劇記〜
- 2015.08.02 Sunday
- 00:01
JUGEMテーマ:演劇・舞台
キャラメルボックス30th vol. 3
『時をかける少女』
東京公演
2015年7月28日(火)〜8月9日(日)全18公演
会場:東京都 池袋 サンシャイン劇場
料金:
平日 S席7,000円 A席5,500円
土日 7,000円
ユースチケット4,000円 小中高生シート1,000円 60歳以上4,000円
大阪公演
2015年8月20日(木)〜8月24日(月)全6公演
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ
料金:一般7,000円 ユースチケット4,000円 小中高生シート1,000円 60歳以上4,000円
以下、ネタばれを含むので観ていない方は注意してください。
演劇集団キャラメルボックスが池袋のサンシャイン劇場で上演している舞台版『時をかける少女』(以下『時かけ』)を観に行ってきた。
冒頭、主人公尾道マナツは小説家志望の17歳。札幌で小説を書いている。だが、なかなか話を思いつくことができない。そこで、私小説を書くことにした矢先、叔母の芳山和子が病気で手術をするので、身の回りの世話をするために東京に行くことに。
この冒頭のシーンと時折、小説の地の文のようなマナツの状況説明が入るので、もしかしたらこの話はマナツの小説でした!なんてオチになるのではないかと思った。もちろん、そんなことはない。しかし、ラストこの私小説が物語に希望をもたらすのをみて、さすが成井さんだと感心してしまった。
36年前に芳山くんが日記を書いてなくて良かったな、深町くん!
そして、今回の作品は二つのラブストーリーが進んでいく。ひとつは主人公マナツの。でも、それがラブストーリーだと気づくのはかなりラストの方。
それよりも、芳山和子のラブストーリーがかなり来る……。病気の和子を助けるために時間警察の目をかいくぐり、自分を追ってくる別の人物から逃れてまた未来からやってくる深町一夫。原作未読の僕にとっては大林宣彦版で言ってた
「何度も会いに来る。別の姿で」
という約束を深町は果たしていたのだというのが嬉しい。
それにしてもラブストーリーは『ロミオとジュリエット』の時代からなんらかの障害がないと成立しない。
でも、身分違いの恋なんて時代遅れだし、今では同性愛ですら障害になりそうもなくなってきてる。
そんな中、まだSFは恋の障害を持ってる。特にタイムトラベルSFは過去の時代に干渉してはいけないという制約があればそれが二人の前に立ちはだかる障害となり得る。
現実の恋愛に例えば身分違いの恋なんていう障害は欲しくはないが、やはり物語においては感情移入するのに必須だと思う。
それと、タイム・リープの演出は面白い。
この“過去に進む”を演出する方法としてはもしかしたら誰でも思いつくものかもしれない。しかし、それは映像ならばやろうと思うかもしれないが、演劇というジャンルでこれを見せられるとは想像してなかった。
こんなの、動きの一挙手一投足が決められてるキャラメルボックスにして初めて可能な演出。アドリブのようにみせかけているギャグでもちゃんと決められた動きだったんだと改めて感心する。
ただし、今回はさすがに『日替わり、週替わりネタ』のようなものはタイム・リープシーンには挟み込めないだろう。絶対混乱するよね。
ツイッターである漫画家の方が日テレの深夜でやっていた大林版『時かけ』を見たそうだ。そして深町一夫が行なった深町家の人たちへの記憶の改竄の残酷性を指摘していた。それを読んで、やはり物語を作る人は視点が違うなと感心した。そして、今回のキャラメル版『時かけ』も記憶の改竄の残酷さをまざまざと見せつけてくれる。一つ一つ丁寧に。
やはり物語を作る人は視点が違うわ。