今回は愛国者ボンさん。
今朝のメルマガは『ニコ生ゼミ』のセレクトから。
「ボンさんね、実はすごい愛国家。ロシアという国が大好きで、ロシアの国の過去にあった歴史というのをメチャクチャ誇りにしている。その代り、ロシアに都合が悪かったり、ちょっと「あ、これはマズいな」と思ってる、いわゆる“黒歴史”みたいなものに関しては、ボンさんね、いつもちょっと口籠っちゃう。
物知りなんだよ、ボンさん。すっごい物知りだから、次々と面白いことを教えてくれる。同時にすごい愛国者なので、時々、変なことを言い出す。
「ガガーリンさんは1961年4月に……」って、こういう数字が、あの人、スラスラ出てくる。「1961年4月に人類として初めて宇宙に行きました!」って。こういうふうに、「ソ連は偉かったんだ!」って言う時のボンさんの圧がすごい。
「その後、アメリカが宇宙に行ったのはいつデスカ? 1961年、アメリカは行けませんデシタ。1ヶ月後の1961年5月、アメリカはアラン・シェパードさんを打ち上げました。でも、それはガガーリンと同じ宇宙ではナイ。ガガーリンはちゃんと地球の周りを回った!」そうですね。衛星軌道を回りましたね。「そう! ガガーリンはちゃんと回った! でも、アラン・シェパード違う! 上がって行って、落ちただけ!」ああ、確かに“弾道飛行”でしたね。
「ガガーリンさんはちゃんと衛星軌道を回りました。でも、シェパードさんは回ってない。ロケットで打ち上げて降りて来ただけです。次の人も同じ、ガス・グリソムさんも落ちて来ただけ。結局、アメリカがジョン・グレンさんで地球の軌道をちゃんと回れたのは、ガガーリンの翌年、1962年です!」という、こんなふうに、すごい誇りを持って、当時のソ連がいかにアメリカよりも優れていたかを語る。
「ソ連は3人も乗れる宇宙船ボスフォートを1964年に打ち上げマシタ。アメリカはどうデスカ? アメリカは、その翌年の1965年、やっと2人乗りの小さな小さな宇宙船ジェミニを打ち上げマシタ。わかりマスカ? そんなアメリカが……」って、ここでボンさんが言い出した。「そんなアメリカが、どうやって4年後の1969年に月まで行けるでショウカ? 行けマセン。不思議過ぎマス。宇宙開発ではソ連が常に勝ってイタ。それを4年間で、たった4年でひっくり返すなんて、変だと思いマセンカ?」。
ボンさん、モスクワ大学に案内してくれる車の中で、ついに僕に向かって“陰謀論”を言い出した。「不思議な噂がアリマス。これ、ロシアでは信じている人、とても多い。アメリカが、あの当時の科学力で、月に行けるはずがナイ。行けるなら、なぜ、その後50年も誰も行ってないのデスカ? 今はでも小さな探査機が月に行くのがやっとデス。そんな遠い遠い月に、ソ連でも行けなかった月に、50年前のアメリカが行けたなんて、信じられマセン! 実はアメリカは月に行ってナイ! あれは映画会社が作った偽映像デース!」。
いやいや、ボンさん、それはマズいっす。あなた観光ガイドだから、ロシアやソ連について言っていることは、それはまあ俺は信じるんだけども。でも「アメリカは嘘つきだ」って言うのは、それはマズいと思った。
ボンさん納得してくれなくて、「アメリカはあなたの国に原子爆弾を落としマシタ! 広島に落としマシタ! 長崎に落としマシタ! そんな国デス! 信じてはイケナイ! 危険デス! 彼らは、またいつ、日本やロシアに原爆や水爆を落とすかわかりマセンヨ!」と言われた。そこで「一度やったことは、必ずもう一度やりマス!」って言われて、「ああそうか」とわかった」
ボンさん、面白そうだけどガイドしてもらうと大変そうだな。
『岡田斗司夫の毎日メルマガ』
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